大阪地方裁判所 平成4年(わ)2506号 判決 1993年3月16日
本店所在地
大阪市中央区谷町一丁目二番七号
株式会社
四葉商事
(右代表者代表取締役 後藤忠義)
本籍
大阪府寝屋川市萱島信和町二一番地
住居
大阪市都島区友渕町一丁目五番一二-九一二号
会社役員
後藤忠義
昭和一八年五月一一日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宮下準二出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社四葉商事を罰金五〇〇〇万円に、被告人後藤忠義を懲役二年に各処する。
被告人後藤忠義に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社四葉商事(以下、「被告会社」という。)は、大阪市中央区谷町一丁目二番七号に本店を置き(昭和六一年六月一二日から平成元年一〇月二二日までの間の本店所在地は、同市北区西天満五丁目一三番一二号。)、ゴルフ会員権の売買並びに斡旋等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人後藤忠義(以下、「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役として、被告会社の業務全般を統括していた。被告人は被告会社の業務に関し、その法人税を免れようと企て
第一 売上の一部を除外するほか架空の販売手数料を計上するなどの方法によりその所得の一部を秘匿して、被告会社の昭和六三年六月一日から平成元年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が九八八二万二一七九円であつた(別紙(一)修正損益計算書参照)のに、同年七月二五日、同市北区南扇町七番一三号所在の所轄北税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一四四〇万八九一八円で、これに対する法人税額が五〇八万八六〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、この事業年度における正規の法人税額四〇五四万二五〇〇円と申告税額との差額三五四五万三九〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れた、
第二 第一と同様の方法により、その所得の一部を秘匿して、被告会社の平成元年六月一日から平成二年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が六億四六八七万三〇〇九円であつた(別紙(二)修正損益計算書参照)のに、同年七月二五日、同市中央区大手前一丁目五番六三号所在の所轄東税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一億六八四八万九五二一円で、これに対する法人税が六六一一万七八〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、この事業年度における正規の法人税額二億五七四七万一四〇〇円と申告税額との差額一億九一三五万三六〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた。
(証拠の標目)-括弧内の算用数字は証拠等関係カード検察官請求分の請求番号を示す。
判示全部の事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する各供述調書(二通)
一 査察官調査書(7、9、12から14、16、19)
一 検察官作成の査察官調査書補充説明書
一 証明書(6)
一 松本尚美(20から23)、亀田久美、稲岡辰男、本郷拓彦、藤田繁富、谷常孝、道橋磯彦、堀正、松村建次、北沢照夫、杉田稔夫、山下毅、中村栄志、塚田正、藤井勲、山本淳、豊山浩二、塚本耕二、真屋哲也、伊藤宏、岩澤貞明、杉田迪、坂井閲三、浅井信昭、奥久早智雄、山田文子こと崔文善、林佳司の大蔵事務官に対する各質問てんまつ書
一 法人登記簿謄本
判示第一の事実について
一 査察官調査書(17)
一 証明書(3)
一 検察事務官作成の報告書(5)
判示第二の事実について
一 査察官調査書(10、11、15、18)
一 証明書(4)
一 松本尚美の大蔵事務官に対する質問てんまつ書(24)
一 検察事務官作成の捜査報告書(64)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役二年に処し、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右の刑の執行を猶予することとする。
被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、右各所為につき法人税法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用して罰金額をその免れた法人税の額以下とし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四八条二項により各罪の罰金額を合算し、その金額の範囲内で被告会社を罰金五、〇〇〇万円に処することとする。
(量刑の理由)
本件事案は、ゴルフ会員権の委託販売を行つている被告会社を統括する被告人が、平成元年五月期、平成二年五月期の二期にわたつて、売上の一部を除外するほか架空の販売手数料を計上するなどの方法により、被告会社の所得の一部を隠して申告し、二年分合計で二億二、六〇〇万円余りの法人税を脱税したものであり、そのほ脱税額は高額であり、二期通算のほ脱率も七六・一パーセントと高率である。しかも、被告人は、会社の資産運用の一環と考えていたとはいえ、脱税することにより得た金を株式売買に投資して回収できなくなつてしまつており、修正申告は済ませているものの、そのほとんどが未納付である。また、脱税の動機については、浮き沈みの激しい業務であることから、不景気の時のため、内部留保額を多くしたかつたことなどとするが、これらのことは通常の営業努力の範囲内においてすべきことであり、決して被告人にとつて斟酌すべき有利な事情にはならない。
しかしながら、被告人は、査察段階から事実を認め、自ら積極的に捜査にも協力するなど反省していること、再発防止のために、新たに税理士の指導のもと経理、納税体制を改善していること、被告会社においては、調査後直ちに修正申告を済ませており、大半が未納付ではあるが、分割払いで納付していくことになつていて、被告会社の財産もほとんど差押られており、それによりある程度の回収は見込めることなど、有利な事情も認められることから、主文のとおり量刑した。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 田中正人)
別紙(一) 修正損益計算書
<省略>
別紙(二) 修正損益計算書
<省略>
別表(三) 税額計算書
<省略>
別表(四) 税額計算書
<省略>